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海外、販路開拓 2026/08/20

訪日外国人のアニメ聖地巡礼の実態は?動向と地域経済への影響も解説

訪日外国人のアニメ聖地巡礼の実態は?動向と地域経済への影響も解説

訪日外国人がアニメ作品の舞台を訪れる「聖地巡礼」は、近年、インバウンド観光の新たな柱として注目を集めています。

2025年には約354万人が聖地巡礼を行ったと試算されており、地域経済への波及効果や地域活性化への期待も高まっています。

その一方で、人気スポットへの観光客の集中や受け入れ体制の整備など、新たな課題も浮かび上がっています。

本記事では、観光庁の最新データとサーベイリサーチセンターが実施したグループインタビュー調査をもとに、訪日外国人による聖地巡礼の現状や地域経済への影響、今後の受け入れ拡大に向けた課題を解説します。

インバウンド施策を担当する自治体・観光事業者の方や、アニメ聖地巡礼を活用した地域活性化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

アニメ聖地巡礼とは何か

「聖地巡礼」とは、アニメやマンガ、映画などの作品の舞台やモデルとなった場所を実際に訪れることです。ファンの間で自然に広まった文化であり、作品の世界観を現実の風景の中で体感できることが大きな魅力とされています。

「聖地巡礼」という言葉が社会的に広く知られるようになったきっかけの一つが、2016年公開の新海誠監督作品『君の名は。』です。舞台となった岐阜県飛騨市や東京都新宿区などに多くのファンが訪れたことを受け、「聖地巡礼」は2016年の「新語・流行語大賞」トップ10にも選ばれました。

なお、「聖地巡礼」と似た言葉に「アニメツーリズム」があります。聖地巡礼がファン一人ひとりの自発的な訪問行動を指すのに対し、アニメツーリズムは行政や企業、地域が連携し、観光資源としてアニメを活用する取り組みを指すことが一般的です。

つまり、聖地巡礼は旅行者の行動、アニメツーリズムは地域が進める観光施策という違いがあります。

最新データで見る聖地巡礼の現状

訪日外国人によるアニメ聖地巡礼は、現在どのくらいの規模で行われているのでしょうか。ここでは、観光庁や総務省などのデータをもとに、聖地巡礼の広がりや今後の需要について見ていきます。

訪問率はコロナ前の約2倍に拡大

訪日外国人によるアニメ聖地巡礼は、ここ数年で急速に広がっています。

観光庁の「インバウンド消費動向調査(2025年年次報告書)」によると、訪日外国人の8.3%が「映画・アニメゆかりの地を訪問した」と回答しています。

さらに、「次回の訪日で体験したいこと」として映画・アニメの聖地巡礼を挙げた人は14.0%にのぼり、実際の訪問率を大きく上回りました。このことから、今後さらに聖地巡礼を目的とする旅行者が増える可能性があると考えられます。

また、実際に聖地巡礼を体験した人の満足度は96.3%と非常に高く、一度訪れた旅行者の多くが満足していることも分かっています。

こうした人気は、コロナ禍を経て一段と高まりました。2019年には「映画・アニメゆかりの地を訪問した」と回答した人の割合は4.6%でしたが、2025年には8.3%まで上昇し、訪問率はコロナ前の約2倍に拡大しています。

背景には、動画配信サービスの普及によって日本のアニメが海外でより身近な存在となり、作品の舞台を実際に訪れたいと考える旅行者が増えたことがあると考えられます。

参照:観光庁「インバウンド消費動向調査(2024年・2025年)」

関心はアジア圏から欧米圏へも広がる

日本アニメの海外展開は、近年アジア圏にとどまらず、欧米圏にも大きく広がっています。

総務省「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(2024年度)」によると、2024年度のアニメ海外輸出額は約951.8億円に達し、このうち北米向けは約299.1億円、欧州向けは約125.6億円を占めています。

こうした世界的な普及を背景に、欧米圏でも作品の舞台を実際に訪れる「聖地巡礼」への関心が高まっています。

実際に、サーベイリサーチセンターの調査でも、欧米豪グループの参加者が日本各地の聖地を訪れていることが確認されました。今後は、欧米圏からの聖地巡礼者の増加も、インバウンド観光における重要なトレンドの一つになっていくでしょう。

参照:総務省「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析 2024年度(2026年4月20日公表)」

欧米豪・アジアで異なる聖地巡礼の特徴

ひとくちに「聖地巡礼」といっても、その楽しみ方や行動パターンは、訪問者の出身地域によって異なります。ここでは、私たちサーベイリサーチセンターが実施したグループインタビュー調査をもとに、欧米豪とアジア、それぞれの聖地巡礼の特徴を見ていきましょう。

調査概要

訪日外国人による聖地巡礼の実態をより深く把握するため、サーベイリサーチセンターは2024年9月にグループインタビュー調査を実施しました。(「外国人によるアニメ・マンガの聖地巡礼の実態調査」 )

調査対象は、コロナ禍以降に日本でアニメ・マンガの聖地巡礼を経験した45歳以下の在留外国人女性です。若い世代に対象を絞り、現在の聖地巡礼ニーズや行動の特徴をより鮮明に把握することを目的としています。

調査は、国籍・地域別に「欧米豪グループ」と「アジアグループ」の2グループに分けて実施しました。

地域ごとにグループを分けたのは、欧米豪とアジアでは日本のアニメに触れるきっかけや文化的背景が異なるためです。グループを分けて調査することで、聖地巡礼に対する考え方や行動の違いを、より明確に把握できるようにしています。

両グループに共通する傾向

グループインタビューの結果、欧米豪・アジアの両グループには、共通する行動パターンが見られました。

まず、聖地巡礼では「写真撮影」「周辺の観光」「その地域ならではの食」を楽しむことが中心です。特に、アニメのシーンと同じ構図で写真を撮ることへの関心が高く、聖地だけでなく周辺の観光スポットや地元グルメも積極的に楽しむ傾向があります。

消費行動では、交通費は割引などを活用して抑える一方、グッズには「5,000円程度」、食事には「上限を設けない」という回答が多く見られました。地域限定グッズや、その土地ならではの食への関心の高さがうかがえます。

情報収集にはSNS(X、Instagram、TikTokなど)やGoogleマップ、現地の看板が活用されており、訪問後にはアニメのシーンと実際の風景を並べた写真や、現地での注意点をSNSやブログで発信する人も少なくありません。

また、聖地巡礼をきっかけに地域への関心が高まり、「再び周辺地域を訪れた」「地域の歴史を調べた」といった声も聞かれました。聖地巡礼は、周辺地域への興味や再訪を促す「クロスオーバー効果」を生み出していることがうかがえます。

欧米豪とアジアで異なる点

一方で、欧米豪グループとアジアグループには、いくつかの違いも見られました。

まず、アニメ・マンガとの関わり方です。欧米豪グループは、友人やパートナーとPCで視聴し、感想を共有しながら楽しむ傾向があります。一方、アジアグループは、スマートフォンで1人で視聴し、作品の世界観に没頭するスタイルが中心です。

好きな作品のジャンルにも違いがあります。欧米豪グループでは、『美少女戦士セーラームーン』や『呪術廻戦』など、ヒーローやバトルを題材にした作品が人気です。一方、アジアグループは、『SLAM DUNK』や『クレヨンしんちゃん』のように、家族や部活動、日常を描いた作品を好む傾向が見られます。

最も大きな違いが表れたのは、聖地巡礼の「決め手」です。欧米豪グループは、「好きな作品であれば、場所や距離に関係なく訪れたい」と考える人が多いのに対し、アジアグループは、「周辺に観光スポットがあるか」「その地域ならではの食を楽しめるか」といった要素も重視しています。

聖地巡礼だけでなく、旅行全体の満足度を意識して行き先を選ぶ傾向がうかがえます。

聖地巡礼が地域経済にもたらす効果

聖地巡礼が地域経済にもたらす効果

アニメ聖地巡礼は、地域経済にも大きな波及効果をもたらしています。ここからは、実際に聖地として注目を集めた地域の事例をもとに、観光客数や消費額にどのような変化が生まれたのかを見ていきましょう。

成功事例1.岐阜県:複数作品が重なる聖地として国内外に認知

岐阜県は、飛騨市・高山市・大垣市など県内各地が複数の人気アニメ作品の舞台となっており、国内外のファンから広く知られる聖地エリアです。複数作品の舞台が集まることで、一つの作品の人気に左右されにくく、継続的な誘客が期待できます。

なかでも飛騨市では、2016年8月公開のアニメ映画『君の名は。』をきっかけに、同年9月以降、全国各地から聖地巡礼者や観光客が訪れるようになりました。飛騨市観光統計公表資料によると、年末までの聖地巡礼者数は約3万6千人と推計されています。

外国人観光客への波及効果も顕著です。同年の外国人宿泊客数は前年比27.3%増を記録し、なかでも香港からの宿泊客は前年比62%増の2,511人で、国・地域別では最多となりました。

このように岐阜県の事例は、複数の人気作品を地域全体で生かすことで認知度を高め、国内外から継続的な誘客につなげている代表的な成功事例といえるでしょう。

参照:飛騨市「平成28年飛騨市観光統計公表資料」

成功事例2.函館:映画公開と観光客数の連動

函館市は、2024年公開の映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の舞台として注目を集め、作品公開をきっかけに観光客が増加した地域のひとつです。

映画公開に先立ち、自治体と民間が連携して受け入れ体制の整備を進めました。函館市では、公式タイアップによる情報発信など、作品公開を見据えた取り組みを展開しています。

その結果、映画公開期間を含む2024年度上半期(4〜9月)の観光客数は、前年同期比10%増の約345万3千人となり、コロナ禍前の2019年度を上回る過去10年で2番目の高水準を記録しました。さらに、外国人宿泊客数も前年同期比37%増の約20万2千人となり、インバウンド需要への波及効果も見られました。

この函館市の事例は、作品公開に合わせた情報発信や受け入れ体制の整備によって、聖地巡礼を地域への誘客につなげた代表的な成功事例といえるでしょう。

参照:函館市「令和6年度(2024年度)上期 来函観光入込客数推計」

訪日外国人の受け入れ拡大に向けた課題

聖地巡礼を目的とした訪日外国人は増加し、地域経済への波及効果も期待されています。一方で、その需要を持続的な地域活性化につなげるには、受け入れ体制の整備や訪問者の実態把握など、解決すべき課題も残されています。

【訪日外国人の受け入れ拡大に向けた課題】

  • 国・地域ごとの実態把握が不十分
  • マナー・多言語対応・情報発信の未整備
  • 持続可能なアニメツーリズムに向けた施策の検討

1.国・地域ごとの実態把握が不十分

聖地巡礼を目的に日本を訪れる外国人は増えているものの、どの国・地域の人が、どの作品をきっかけに、どのような行動を取っているのかという実態は、まだ十分に把握されていません。

例えば、フランスは日本国外でも特にマンガ文化が根付いており、日本アニメへの関心が高い国として知られています。一方で、その他の欧州各国や中東、南米などでは、聖地巡礼への関心度や旅行行動、消費傾向に関するデータが限られているのが現状です。

近年は、訪日外国人向け調査で「聖地巡礼」を旅行目的の選択肢に加えるケースも増えてきました。しかし、国・地域ごとの行動特性や消費傾向まで詳しく分析した調査はまだ少なく、実態把握は十分とはいえません。

自治体や観光事業者が効果的なインバウンド施策を進めるためには、どの国・地域のファンが、どの作品を目的に、どの地域を訪れているのかをデータで把握することが不可欠です。今後は、より精度の高い調査・分析を進め、それぞれの特性に応じた施策へつなげていくことが求められます。

2.マナー・多言語対応・情報発信の未整備

聖地巡礼者の増加に伴い、受け入れ側の地域ではさまざまな課題が顕在化しています。特に重要なのが、マナー対策・多言語対応・情報発信の3つです。

まずマナー面では、人気作品の聖地に訪問者が集中することで、私有地への無断立ち入りや住宅街での撮影、ゴミの放置などのトラブルが一部地域で発生しています。訪日外国人は日本独自のマナーや地域ごとのルールを事前に知る機会が少ないため、分かりやすい情報提供が欠かせません。

多言語対応も課題です。英語・中国語・韓国語などによる案内板や公式サイトの整備が十分でない地域も多く、訪日外国人はSNSや海外のファンコミュニティなど、非公式な情報を頼りに訪問するケースが少なくありません。そのため、正確なアクセス方法や地域のルールが伝わりにくい状況があります。

また、情報発信では、聖地だけでなく周辺の飲食店や宿泊施設、観光スポットもあわせて紹介することが重要です。聖地巡礼者は周辺地域でも積極的に消費する傾向があるため、地域全体の魅力を発信することで、より大きな経済効果が期待できます。

これらの課題への対応は、訪問者の満足度向上だけでなく、地域住民との共存や持続可能なアニメツーリズムの実現にもつながるでしょう。

3.持続可能なアニメツーリズムに向けた施策の検討

聖地巡礼による観光効果を一過性のブームで終わらせず、地域の持続的な振興につなげるには、ファン、作品権利者、地域、民間企業が連携し、それぞれの立場を尊重した取り組みを進めることが重要です。

また、聖地巡礼の価値を高めるには、作品の舞台を訪れる体験だけでなく、その地域ならではの魅力を組み合わせる視点も欠かせません。

サーベイリサーチセンターの自主調査では、聖地巡礼をきっかけに地域の歴史や文化への関心が高まり、再訪につながるケースも確認されています。聖地だけでなく、周辺の観光スポットや地域ならではの食などと組み合わせることで、訪問者の満足度向上や地域全体への経済波及効果が期待できるでしょう。

アニメ聖地巡礼の可能性を最大化するために、まず実態を知ろう

本記事では、訪日外国人によるアニメ聖地巡礼の現状や地域経済への影響、受け入れ拡大に向けた課題について解説しました。

聖地巡礼は、訪日外国人の間で着実に広がりを見せています。欧米圏にも関心が広がり、岐阜県や函館の事例からは、地域経済への大きな波及効果も確認されています。一方で、国・地域ごとの実態把握や多言語対応、持続可能な受け入れ体制の整備など、今後取り組むべき課題も少なくありません。

こうした課題に対応するためには、訪問者の行動やニーズを深く理解することが重要です。観光統計だけでは把握しきれない「なぜその聖地を訪れたのか」「どのような体験を求めているのか」といった背景を明らかにするには、グループインタビューなどの定性調査が有効です。

サーベイリサーチセンターは、訪日外国人を対象としたインバウンド調査を専門的に手がける総合調査会社です。グループインタビューをはじめ、多言語対応による調査設計や国・地域別の行動分析など、幅広い調査サービスを提供しています。

アニメ聖地巡礼やインバウンド施策に関する調査をご検討の際は、ぜひサーベイリサーチセンターへご相談ください。

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私たちサーベイリサーチセンターは、長年にわたり行政機関や民間企業の皆様に信頼される調査パートナーとして、世論調査や商圏分析、各種計画策定のための住民調査など、数多くのプロジェクトを手がけてまいりました。

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