調査タイトル:「日常生活に関する調査」
調査対象:日本国内に住む15~74歳
対象者数:1000人
回収割当:性別(2)×年齢別(4)×地域別(6)の48層に層化し、令和2年国勢調査の人口構成比で割当
調査方法:インターネット調査(パネルモニター調査)
調査期間:2023年9月27日~10月4日
調査内容:孤独感(4尺度の尺度別孤独感)、主観的ウェルビーイング・精神状態(孤独感の関連変数:主に孤独感に説明される変数)、属性(孤独感の関連変数:孤独感を説明する変数)、生活行動・環境(孤独感の関連変数:説明・被説明に使用する変数)、回答拒否感(孤独のセルフスティグマ検討用の変数:調査で答えたくなかった質問を聞いたもの)
2024年4月1日に孤独・孤立対策推進法が施行された。孤独・孤立への関心を背景に、孤独の実態把握・解明に向けた調査・研究が進められている。「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」(統計調査法による一般統計調査)や、「社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築」研究開発プログラム(科学技術振興機構)等の大規模な調査・研究も進められている。
孤独の実態把握には、孤独感を測るモノサシ(孤独感尺度)が必要となる。現在、日本国内では複数の孤独感尺度が使用されており、前掲の一般統計調査でも複数の尺度が使用されいる。こうした中、より適切に孤独の実態を把握していくためには、各尺度がどのような特性をもっているのかを理解した上で使用していくことが重要となる。
そこで本研究では、4つの孤独感尺度を取り上げ、それらの比較を通じて各尺度の特性の解明を進めることとした。比較にあたってはアンケート調査を通じて実際に孤独感のデータを収集し、実証的に分析を進めることとした。
UCLA-SF10、UCLA-SF3、直接質問法では真ん中付近のスコアに多く分布する山型の分布形状となっている。
AOKでは、0点に最も多く分布しており、他の3つの尺度とは分布形状が異なっている。
ただし、孤独の実態把握で重要となる孤独感の強い層(=孤独感スコアが高いほうの層)の分布が相対的に少ないことは、4つの尺度で概ね共通している。
4つの尺度から2つずつ組み合わせて、2つの測定結果の重なりをみると、片方の尺度のスコアが低ければもう片方のスコアも低いほうに位置している人が多く、片方の尺度のスコアが高ければもう片方のスコアも高い方に位置している人が多くなっている。概ね各尺度間の分布に整合的な重なりがあることが確認できる。
尺度間の相関は、強めの相関~強い相関となっている。
回答者を40の属性でとらえ、各属性の孤独感を尺度間で比較したところ、9つの属性(男性、女性、45-59歳、学生・生徒、単身、社会的孤立、非孤立、交流なし、交流あり)で測定結果に有意な差(統計的に意味のある差)があることが確認された。孤独感尺度の開発過程では、特定の年齢層(特に高齢者)の測定の信頼性確保が大きな課題となってきたが、本調査では主にそれ以外の層の測定結果で尺度間に有意な差がみられた。
尺度間で差があることが確認された属性において、UCLA-SF10(フルバージョンに代用した尺度)とその他の各尺度の測定結果を比較すると、男性及び女性ではUCLA-SF3及び直接質問法で有意な差があった。男性ではUCLA-SF3及び直接質問法での測定結果がUCLA-SF10の測定結果よりも有意に低く、女性では有意に高くなっていた。また、社会的孤立層、非孤立層、交流なし層でも、UCLA-SF3及び直接質問法の測定結果はUCLA-SF10の測定結果と有意な差があった。
40属性のうち31属性では各尺度の測定結果に有意な差は確認されておらず、概ね同等に測定されていた。
孤独感尺度の開発、孤独感の測定においては回答者のセルフスティグマ(自分は孤独だという自己偏見)を刺激しないように配慮されてきた。他方、直接質問法では孤独感を直接聞く方法がとられている。本研究では各尺度でセルフスティグマの影響を抑えることができているか把握を試みた。
把握方法は次の通りである。「孤独のセルフスティグマが刺激されれば孤独感を測る質問に対して回答拒否感を抱く」を前提に「回答拒否感を抱けば(すぐに回答できず)アンケートの回答時間が長くなる」と仮説を設定し、回答拒否感と回答時間との関係を求めた。
各尺度の分析結果を比較すると、直接質問法への回答拒否感があれば回答時間が長くなる関係があることが確認された。他の尺度への回答拒否感と回答時間とには同様の関係は確認されなかった。この方法ではセルフスティグマ及び測定値への影響を直接的に測っているわけではないが、直接質問法はセルフスティグマを刺激している可能性があり、その影響を受けている可能性もあると考えられる。
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