・調査対象 : 日本全国の 20~59 歳の男女個人(民間企業の正社員および公務員の正規職員)
・調査方法 : インターネット調査(インターネットリサーチモニターに対するクローズド調査)
・調査内容 : 職場でのコミュニケーション全般/人材育成・制度/就労意識・ストレス/ほめる・叱られることについて/直属の上司との関係/直属の部下との関係など
・調査期間 : 平成 26 年3月 27 日(木)~4 月3日(木)
・有効回答 : 665 サンプル
・回答者の構成: 民間企業の正社員 管理職(課長以上)124 サンプル / 一般社員 213 サンプル
公務員の正規職員 管理職(係長以上)122 サンプル / 一般職員 206 サンプル
新年度がスタートし、職場では新たなメンバーを迎え入れることが多いなか、特に管理職の方は「部下の育成方法」に悩む機会も増えていることが予想されます。
昨今、職場での従業員指導・育成のテーマにおいて「部下のほめ方」といった特集がたびたびメディアに取り上げられるようになり、また表彰制度など「ほめる仕組み」の導入は民間企業のみならず公共分野にも広がりをみせています。
そこで株式会社サーベイリサーチセンターでは、一般社団法人日本ほめる達人協会 西村貴好理事長 および同協会顧問 同志社大学政策学部 太田肇教授(ワーク・モチベーション専門)の監修のもと、職場内での上司‐部下間のコミュニケーション、特に「ほめる」ことが従業員のモチベーション向上に効果を与えるかについてアンケート調査を実施しました。
・従業員育成に「積極的に」取り組んでいる職場は 12.3%にとどまり、「ある程度」取り組んでいる職場が48.7%と半数近くを占めています。
・「積極的に」と「ある程度」を合計すると、民間で 56.1%、公務で 66.2%と公務が上回っています。
・「努力や成果を表彰する仕組み・制度(社長賞、月間 MVP など)がある」職場は 41.7%でした。民間で45.1%、公務で 38.1%と、やや民間が上回っています。
・従業員育成に「積極的に」取り組んでいる職場では、69.5%がほめる仕組みを導入しています。
・表彰制度等のほめる仕組みが従業員のやる気の向上に「効果があると思う」(おおいに+ある程度)という意見が 71.9%を占めています。とくに、民間管理職で 82.3%と高い結果でした。導入の有無による違いは、さほど見られませんでした。
・「上司と業務においてコミュニケーションを取れている」 (そう思う+ややそう思う)人は 63.2%、「上司との信頼関係を築けている」人は 60.6%と6割を超えていますが、「上司による部下の育成方法に満足している」 人は 39.6%と6割が不満をもっていることがわかりました。
・「上司からほめられる方だと思う」 (そう思う+ややそう思う)人は、47.5%でした。民間では 43.7%、公務では 51.5%であり、とくに 20 代公務では 61.7%と高い結果でした。
・実際に1ヶ月以内に「上司からほめられた」経験がある人は 33.7%でした。「上司からほめられる方だと思う」人のうち 50.8%と半数は、1ヶ月以内に実際にほめられています。
・「上司からほめられる方だと思う」人では、「上司による部下の育成方法に満足」が 54.3%と過半数でした。
・1ヶ月以内に「同僚・後輩をほめた」人は 34.1%で、「上司からほめられた」割合よりわずかに高くなっています。1ヶ月以内に「上司からほめられた」人では 63.1%が「同僚・後輩をほめた」としています。
・上司の行動や言葉で「やる気が高まった」と感じたことがある人は 56.8%でした。
・「やる気が高まった」と感じた上司の行動や言葉を具体的に聞いたところ、上司から「ほめられた(認められた、評価された)」内容が半数以上と最多でした。次いで上司から「感謝された」、「任された」、上司の「激励」 、「率先して動く姿勢」 、「適切なアドバイス」、「部下への思いやり」などの内容が挙げられました。
・「上司からほめられるとやる気が高まる」(高まる+やや高まる)人は 80.7%でした。
・年代別にみると 20 代で高く、とくに 20 代公務では 92.6%と高い結果となりました。
・一方、「上司から叱られるとやる気が高まる」人は 22.0%にとどまっています。
・上司の褒め方の「満足度」(満足+やや満足)は 63.2%。4割弱が不満を持っています。
・不満の理由(複数回答)は、上位から「口先だけでほめる」 (40.9%)、「ほめない」 (33.8%)、「公平にほめない」(27.3%)、「気まぐれにほめる」 (24.7%)の順でした。
・どんな「ほめ言葉」を上司からもらえるとうれしいと思うかを尋ねたところ、
「『さすがだね』など、ちゃんとやっていることを見ていてくれたことがわかる言葉」 (20 代・女性・民間)
「ひとつの仕事の背景まで把握した上で、労いの言葉をもらえると嬉しい」 (20 代・女性・公務)
「工夫したことやその姿勢を認めてもらうような言葉」 (30 代・男性・公務)
といった、自分の行動をしっかり見た上での評価の言葉が多く挙げられました。
・また、自分が役に立っている・必要とされていることが分かる言葉や、感謝の言葉も多数みられました。
「役立っていると実感できる言葉」 (20 代・男性・民間)
「いかに自分が必要かを伝えられるとうれしい」 (30 代・女性・公務)
「やった事に対して気持ちがこもった『ありがとう』」 (30 代・女性・民間)
「上司にほめられている方だと思うか」に対し、「そう思う」「まあそう思う」の 47.5%を『ほめられている人』、「あまりそう思わない」「そう思わない」の 52.5%を『ほめられていない人』として比較しました。
・仕事に対する意識 42 項目※について、5段階(5:まったくそのとおり~1:まったくちがう)のうち上位2段階を占める割合を比べると、すべての項目で『ほめられている人』に“プラスの結果”があらわれました。
・『ほめられている人』での割合が 20 ポイント以上上回る項目としては、「少々困難な目標でも挑戦したいと思う」(『ほめられている人』では 51.8%、『ほめられていない人』では 30.5%)、「仕事を効率的にこなせている」 (54.8%、29.1%)、「会社(地域・住民)に役立っているという自信がある」 (46.7%、21.4%)、「今の仕事に満足している」(38.2%、15.5%)などがあげられます。
・「 毎日、職場に行くのは楽しい」 (34.2%、16.8%)、 「自分の職業・職種に誇りを持っている」 (40.2%、28.2%)といった項目においても、『ほめられている人』での割合が 10 ポイント以上上回っています。
※同志社大学政策学部・太田肇教授「承認とモチベーション」(同文舘出版)より調査項目を使用させていただきました。
・自分に対する意識についても、「自分のことが好き」、「生まれてきてよかった」、「自分は社会の役に立つ人間である」、「自分に満足している」のすべての項目で『ほめられている人』における割合が『ほめられていない人』を 20 ポイント前後上回りました。仕事面のみならず自分自身にも肯定的であるといえます。
・職場のさまざまなストレスについて、「非常にある」の割合を比べると、いずれも『ほめられていない人』のほうが上回りました。とくに「職場の人間関係に関するストレス」が「非常にある」割合は、『ほめられている人』で 15.6%、『ほめられていない人』で31.8%と、15 ポイント以上の差がみられます。
・「 部下の育成方法に自信を持っている」 (そう思う+ややそう思う)人は 42.3%でした。6割弱が「自信なし」としています。
・「自信なし」の割合は、民間で 53.2%、公務で 62.3%と公務が上回っています。また、30~40 代の女性で7割を超えています。
・「部下をほめている方だと思う」 (そう思う+ややそう思う)人は 67.9%でした。50 代女性でもっとも高く79.1%、40 代男性でもっとも低く 48.8%となっています。
・また、「上司からほめられている方だと思う」 (そう思う+ややそう思う)人は 49.2%であり、「上司からほめられている方だと思う」人のうち 76.8%が「部下をほめている方だと思う」としています。
・一方、 「部下を叱っている方だと思う」 (そう思う+ややそう思う)人は 30.1%でした。30 代・男性でもっとも高く 41.3%、40代男性でもっとも低く 23.3%となっています。
・自分の行動や言葉で、部下の「やる気が高まった」と感じたことがある人は 68.7%でした。
・どのような行動や言葉だったかを具体的に聞いたところ、部下を「ほめた(認めた、評価した)」内容が6割弱と最多で、一般社員(非管理職)での結果と同様となりました。次いで部下に「感謝の言葉をかけた」、「適切・親身にアドバイスした」、「自ら動き見本を見せた」、「任せた」、「激励した」、「目標を明確化・共有した」などの内容が挙げられました。
・「 ほめることで部下のやる気が高まる」(高まる+やや高まる)と考える人は 91.1%でした。また、「叱ることで部下のやる気が高まる」(高まる+やや高まる)と考える人は 32.5%でした。
・一般社員(非管理職)での「上司からほめられるとやる気が高まる」80.7%、「叱られるとやる気が高まる」22.0%と比べると、いずれも管理職での割合のほうが上回っていることがわかります。
・部下をほめにくいと感じたことがある人は 68.3%でした。その理由(複数回答)は、「ほめる部分が見つからないから」(36.9%) 「ほめるタイミングがつかめないから」 (31.0%)、「調子に乗るのではないかと思うから」 (28.0%)、「ほかの部下もいるため特定の部下をほめにくい」 (27.4%)の順でした。