2019年の暮れより「新型コロナウイルスによる肺炎」の発生が確認され、多くの感染者とそれによる死者が出ています。また、発生国地域のみならず世界の多くの国でも感染が確認されています。
折しも、我が国においては多くの訪日外国人が来訪する時期と重なり、国民への影響のみならず訪日外国人の安全や観光業界を含めた産業界への影響が懸念される状況となっています。
弊社では下記に示しますように「台風」「地震」と観光の危機管理において重要な災害の発生の時点で「訪日外国人の情報収受と行動について」自主調査を実施してまいりました。今回の調査は、「感染症」という観光危機管理の重要な事案が発生していることと、日本人でも情報の収集と理解及びその対応が困難である中、訪日外国人はどのように情報を収集し、どのようなことに困り、どのような行動を行ったかに視点を充て実施いたしました。
※過去の訪日外国人関連の災害自主調査
https://www.surece.co.jp/research/
2019年10月17日「台風19号の災害情報等における事前対応に関する訪日外国人調査」
2019年6月27日「山形県沖地震に関する外国人調査」
2018年10月3日「台風24号における訪日外国人旅行者の避難行動に関する調査」
2018年9月14日「北海道胆振東部地震における訪日外国人旅行者の避難行動に関する調査」
2018年6月29日「大阪北部地震における訪日外国人旅行者の避難行動に関する調査」
2016年4月27日「熊本地震における訪日外国人旅行者の避難行動に関する調査」
【主旨】
「新型コロナウイルスによる肺炎」の情報が刻々と変化する状況下で、旅行先の日本国内にいる訪日外国人がどのように情報を収受し、対策を取ったか等について調査しました。
【調査概要】
・調査地点:東京タワー
・調査対象:2020年1月29日時点に日本に滞在した訪日外国人旅行者
・調査方法:外国語の話せる調査員による質問紙を用いた面接聞き取り調査
・有効回答数:256サンプル
・調査日:2020年1月29日(水)・30日(木)
【調査内容】
・「新型コロナウイルスによる肺炎」を知った日
・「新型コロナウイルスによる肺炎」に関する情報源
・「新型コロナウイルスによる肺炎」の情報で分かりにくかったこと
・「新型コロナウイルスによる肺炎」に関する対策・予防策、困ったこと
・感染症発生時の対応希望・対策として必要なこと 等
・新型コロナウイルスによる肺炎を最初に知ったタイミングは、「2019年1月16日~23日( 「発生国で抑え込みを指示と報道」「発生国地域で移動の制限と報道」)」が29.7%と最も多く、ウィルス検出報道前の「2019年12月1日~2020年1月8日」に認知している旅行者は20.7%だった。
・新型コロナウイルスによる肺炎の影響で「旅程の変更をした」旅行者は6.6%にとどまり、85.9%は「旅程の変更はしなかった」と答えた。
・旅程を変更した人にきっかけを聞いたところ「発生国地域での感染拡大の報道」が47.1%と最も多かった。
・新型コロナウイルスによる肺炎に関する情報源は、「母国のテレビや新聞等のWEBサイト」が66.8%と最も多く、「友人のメールやSNS」が55.1%、「日本のテレビやラジオ」が19.1%と続いた。
・そのうち最も役に立ったと答えた情報源は「母国のテレビや新聞等のWEBサイト」48.2%、「友人のメールやSNS」29.2%となったが、「日本のテレビやラジオ」は4.7%に留まった。
・情報を受け取った際、分かりにくかったことを問うた質問では「特にない」49.6%が最も多く、「日本国内のどこで感染したかわからなかった」15.6%と続いた。
・滞在していたホテルで「情報の提供があったか」また「理解できたか」は、「情報の提供があり理解が出来た」が30.5%であった一方、「情報の提供は無く自分で探した」が55.5%となった。
・滞在していたホテルで新型コロナウイルスによる肺炎情報の説明が事前にあればスムーズに行動できたかは、「できたと思う」が60.9%、「たぶんできたと思う」が13.7%と、7割以上が概ねできたと思うに回答している。
・滞在したホテルでの新型肺炎コロナウイルスに関する対策は、「アルコール等の洗浄剤の設置」51.6%、「手洗い・うがい等の実施の指示」16.4%、「マスクの配布」12.5%といった対策が取られていた一方、「特に対策は無かった」が34.4%となった。
・新型コロナウイルスによる肺炎に対する予防策として実施したことは、「手洗い・うがい等の実施」80.9%、「アルコール等の洗浄剤の使用」75.4%、「マスクの着用」70.7%と、この3つの予防策が他の予防策と比べて多く見られた。
・新型コロナウイルスによる肺炎に対して困ったことは、「困ったことはなかった」が66.4%と最も多く、訪日旅行中の活動に対しては影響が少なかったことがうかがえる。
・新型コロナウイルスによる肺炎等の感染症発生時の対応として希望するものは、「医療機関情報などを提供してほしい」43.0%、「インフォメーションセンターでの情報提供を充実してほしい」42.6%、「滞在していたホテルで感染症対策の指導等をしてほしい」32.4%などが求められている。
・「新型コロナウイルスによる肺炎」等の感染症の対策として大切だと思うことは、「感染者を早期発見するために「空港の入出国時の検査」を徹底する」が69.1%と最も多かったが、「手洗いやうがい等を徹底する」62.9%や「感染予防としてのマスク着用等を徹底する」55.5%など、国や行政に拠らず旅行者自身ができる意見も多くあげられた。