PROJECT STORYプロジェクトストーリー

農林水産省が推進する、農林漁業者による農水産物の生産関連事業での所得増大を目指す取り組み「6次産業化」。この取り組みによる所得向上・雇用状況を明らかにし、施策推進に必要な資料を整備するのが『6次産業化総合調査』だ。2011(平成23)年から毎年実施されているこの調査の入札(総合評価落札方式)に、SRCも数年前から参加。提案の内容・機能・技術などが高く評価され、継続受注を決めている。

PROFILE

I・R
2009年入社
大学では文学部・史学科に所属。世の中の役に立つ仕事がしたいという思いから、社会性・公共性を軸に就活をすすめるなか、SRCと出会う。入社後は全国ネットワーク部に配属される。世論調査や統計調査、大規模プロジェクトを経験したのち、6次産業化総合調査に関する調査プロジェクトの主担当に抜擢。周囲を巻き込む力、自由闊達で裏表のないコミュニケーション、常に相手目線を大切にした行動や発言は、プロジェクトメンバーからの信頼も厚い。
  • 01.PROJECT6次産業化総合調査とは?

    6次産業化とは1次産業を担う農林漁業者が、農水産物の生産だけでなく、加工や製造(2次産業)、販売・サービス業(3次産業)までを多角的に手掛けることで、生産物の持っている価値を高め、それにより所得(収入)を向上させ、さらには地方で新しい雇用の創出につなげようという取り組みである。そして、その取り組みの現状を調査するのが『6次産業化総合調査』だ。そもそも国が行う統計調査というのは、仮説を持って行うのではなく、事実・実態を把握しなければいけないというのが大前提にある。そこで、実際に取り組んでいる事業者様の実態を把握する必要があるのだ。郵送・インターネットなどによって収集された情報をもとに「どういった取り組みが効果的なのか」「なにが足りないのか」「どこを支援すればいいのか」など、現状の課題を浮き彫りにし、6次産業化の推進をさらに加速させるための次なる一手となる施策を検討するために活用されるため、都道府県や業態に偏りがでないよう、満遍なく、日本の縮図になるよう対象者を選んで調査をしていくことが求められる。

  • 02.MISSION対象エリアは全国、対象者は1万2000件

    この大規模プロジェクトの受託実績ができたのは2018~2019年頃。SRCがこの大規模プロジェクトの入札に初めて参加したときから主担当として従事しているのがⅠである。対象者は、6次産業化に取り組む全国の農林漁業者。その数、じつに1万2000件。調査規模や内容、実施の難易度から、豊富な経験を持つ彼女が抜擢された。とはいえ規模が規模なだけに、到底ひとりでこなせる量ではない。そこで『調査資材の準備・発送』『回収・督促』『データ入力、審査・疑義照会』『業務従事予定者の教育・研修担当』など、各分野に特化したメンバーを集め、これ以上ないチームが編成された。「調査業界と聞くと質問を考えたり、調査結果を分析したり…というイメージが先行しがちですが、本プロジェクトにおける私たちのミッションはデータ収集。調査票に記載する内容・設問は農林水産省が用意したものを使用します。いかにきちんとしたデータを、質(正しい情報)・量ともに確保できるかが腕の見せ所です」とIは言う。そうして、彼女たちの奮闘の日々がはじまった。

  • 03.FLOW業務範囲について

    6次産業化総合調査の入札は3月に行われる。受注できた後、4月までは調査のための下準備として調査対象名簿の整備業務がある。実際に調査を行うのは9月~10月である。調査方法は郵送で記入用紙を対象者へ配布し、対象者は郵送もしくはインターネットで回答する。「社内のスタッフは20名弱、再委託先であるコールセンターのオペレーターが50名以上。そして対象者1万2000人。人と人との関わりが何よりも大事だと痛感します」とIは言う。情報管理・疑義照会システムを他部署と連携しておこなうなど、組織横断的な体制でプロジェクトに取り組んでいる。【1調査に対して、1人の担当者が一気通貫して仕事をする】部所もあるが、当部所は“複数人で連携してチームで仕事をする”部所である。業務スケジュールについては次のとおり。特に9月以降の作業はほぼ同時並行なので、チーム内の仲間との連携が必要不可欠となる。

    7〜8月 調査資材の印刷・発送
    対象者に郵送で送る書類(お願い状・ご挨拶状・概要説明など)のデザインはどうするか?封筒のデザインは?など、調査票以外のものをデザインするイメージ。どうすれば見てもらえるか、この調査の意義・意味を理解していただけるかを意識しながら、意見を出し合い決定していく。
    8月~翌3月 発送後の問い合わせ対応
    対象者からの質問票に対する「書き方がわからない」「質問の意味がわからない」という問い合わせから、「調査をやりたくない」という問い合わせまで内容はさまざま。ご協力いただいていることへの感謝の気持ちを忘れず、迅速かつ親切・丁寧に対応することが求められる。
    9月~11月 回収・受付
    調査実施と共に徐々に返送書類が事務所に届きはじめるため、調査票の回収・受付業務を行う。
    WEB回答が主流のように思うが、紙の調査票への記入による回答の方が圧倒的に多いことが特徴である。
    また、回答された調査票はWEBでも紙でも個人情報であり、情報セキュリティの観点から取り扱いには十分注意し管理を徹底している。
    9月~11月 調査票のデータ入力
    回収された調査票のデータを専用のシステムに入力。エラーチェックをかけて、電子データ化する。不備や矛盾が発覚した際には、その都度データに訂正を入れていく。調査実施の期間を過ぎてから提出される場合もあるため、こちらもその都度対応していく必要がある。
    9月~12月 督促
    未提出の方に対して、提出を促す作業。連絡のつかない対象者には、直接お宅へ伺い、提出をお願いすることもある。全国にいる600名の登録調査員のなかから200名程度をチョイスし、現地を見てきてほしいと指示を出す。質・量ともに追求するプロジェクトチームにおける、最後の砦といっても過言ではない。
    9月~12月 審査・不備チェック
    データ入力時のエラーチェックで不備があったものを対象者に問い合わせる。また記入はしてあるものの、適当な数字を書かれてしまってはデータとしては使えないため、矛盾などについても「この数字で間違いないですか?」など、問い合わせることもある。
    10月~12月 データ納品
    不備チェックを終えたデータを農林水産省へ納品する。
    このデータが、農林水産省にて集計・分析に使われ、各種施策の検討のための資料になる。

    「国の政策に関わる資料を収集するところに意義を感じています。国の調査だからといってすべての人が協力してくれるわけではありません。そこはやはり、人対人なので。なかには嫌だという人もいます。そういうひとり一人をどれだけ丁寧に振り向かせて票を集められるか。そこに正解のようなものは決してなくて、ずっと何かを努力し続けることが大事なのだと思います。プロジェクトのいいところはみんなで意見を出し合えること。若いメンバー・スタッフも積極的に意見をだしてくれます。みんながおなじ方向を向いてやれているという楽しさは、プロジェクトならではかもしれません。(Ⅰ)」

  • 04.POINT1票にドラマがある

    プロジェクトを管理する上で、I が最も大切にしているのが現場の一体感だ。「私もオペレーターと一緒に対象者の電話を取っているのですが、1票を回収するまでには様々なドラマがあるんです」とⅠは語る。20回電話してもまったく繋がらず、最後にダメ元で連絡をしたら21回目でやっと繋がり回収することができた。ご意見のある電話に対し、2時間に渡って調査の意義を伝え、最後には「わかった。丁寧に説明してくれてありがとう」と理解が得られて回収まで繋げられたケースもある。現地の調査員から、道幅が細くて車が入れません!目印の看板がありません!どこに行けば?と泣きの電話が入れば、一緒に周辺マップを見ながら指示を出し、無事に回収できたと報告がくれば一緒に喜びを分かち合う。「現場のスタッフが嬉しそうに回収の報告をしてくれると、純粋によかったと思いますね。私が本当に嬉しいと思うとスタッフさん自身も、そう言ってもらえてよかった、役に立ってよかったという気持ちになってくれるみたいで」…嬉しそうにⅠは語った。

  • 05.FUTURE1票1票を積み重ねていく大切さ

    統計は、対象者が答えてはじめて成り立つ。しかしながら調査票を送れば返ってくる、そんな単純な話ではない。きちんとしたデータを、質(正しい情報)・量ともに確保するために幾度となく交わされるメンバーとの意見交換。電話の掛け方や受け答えの仕方を見直したり、これまでの実績から時間帯別・曜日別の接続率を見て分析し、繋がりやすいコアタイムを導きだし、その時間帯に集中して架電するようにしたり。若いスタッフのアイデアから回収効率が各段にアップしたこともある。SRCがこの調査を担当してからの回収率は平均60%代を推移。求められる水準を確保し、質的にも非常に満足いただいている。「この数字はいろんな人が汗水流して集めたデータなんです」1票を集める苦労を、Iは誰よりも知っている。データを無事に納品し、プロジェクトが終了を迎えても、ホッとしている暇はない。課題と改善と展望を振り返り、それぞれの実績を分析。業務の振り返りをして、次回に繋げていく。「現状に満足することなく、よりデータを質・量ともに確保するというのを追求していきたい(Ⅰ)」彼女らの目は、すでに次に向けられている。

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