PROJECT STORYプロジェクトストーリー

国土交通省管轄のもと、関係省庁や都道府県、道路関係公団などが連携し、5年に一度の割合で行われる全国の交通実態調査がある。
「道路交通センサス」だ。自動車の使われ方、道路の交通量を調べることを目的とした、いわば国勢調査ともいえる大規模なプロジェクトであり、SRCでは実査(現地での調査・観測)の他、国との協議を行う企画設計にも関わっている。

PROFILE

U・T
2007年入社
中途社員として入社後、調査部(当時の都市交通部)に配属。OA機器営業、建設現場監理などの職を経て、新しい刺激を求めて調査業界に入る。後輩のNからは「入社して右も左も分からない時に、仕事の手本を示してくれた先輩」として信頼は厚い。
N・N
2009年入社
大学在学中に社会学部に所属し、社会調査士の資格を取得。フィールドワークでの調査・検証に面白さを見出し調査業界に入る。入社後は調査部に配属され、1年目から道路交通センサスの担当に抜擢。Uいわく「鉄の心臓を持つ男」として、冷静な仕事ぶりを発揮。
  • 01.ROAD TRAFFIC CENSUS道路交通センサスとは?

    道路の計画・立案の際には、道路の状態や道路利用の現況調査をはじめ、各種の調査を実施し、そのデータをもとに検討する必要がある。「ピーク時の交通量はどの程度あるか」、「道路の幅や整備状況はどうか」、「出発地や目的地はどこか」など、あらゆる角度から基礎データを収集するプロジェクトが道路交通センサスである。
    交通量、旅行速度などの実測を行う「一般交通量調査」、地域間の自動車の動きを把握する「自動車起終点調査」に大きく分かれ、収集されたデータは、現況の交通動向の把握および道路計画、事業評価などに用いられる他、将来の交通需要推計や政策評価などに活用される。また、都市再開発計画時のデータ、カーナビゲーションシステム用のデータベースの一部などに利用されることもある。

  • 02.MISSION10万台以上の車の動向を調査

    SRCには道路交通センサスといった大規模プロジェクトを進める上で、なくてはならない人物がいる。入社以来10年以上、このプロジェクトに従事しているUとNだ。2人が携わるのは前述した「自動車起終点調査」のひとつで、車の所有者が休日と平日の任意の各1日、自宅や車庫を出発してから戻ってくるまでのトリップすべてを調査票(郵送)で答えてもらう、「オーナーインタビューOD調査」である。調査を担当するエリアは東京、神奈川、埼玉の1都2県で、全国の中でも最もボリュームが多いエリアだ。
    「郵送先は個人、事業者に分類し、回収したいサンプル数の目標値に合わせて、おおよそ50〜60万通もの調査票を発送しており、それだけで、とてつもない量です」とN。SRCでの仕事は1業務1担当制のものが多いが、こと道路交通センサスに関しては例外である。プロジェクト規模が大きすぎて、単独ではとてもではないが追いつかないため、専属のチームを結成する。だからこそ調査の勝手を知り、円滑に進められる2人の経験値が必要になってくる。

  • 03.FLOW半年以上ものプロジェクト

    道路交通センサスが行われるのは、表面的には10月〜11月の秋の2ヶ月間。しかしながら、SRCが請け負うこのプロジェクトの期間は2ヶ月ではなく、実質は準備から納品まで1年近くもの時間を費やすことになる。その間どんなことが行われているか流れを整理したい。

    7〜8月 事務所開き・スタッフ募集
    道路交通センサスは一般競争入札であるため、確実に受注できるとは限らない。しかし、受注してから準備をしていたのでは間に合わないため、受注できた時のことを前提に動き始める。事務所探し、設備準備等の仮打診、現場のコアになるようなスタッフの調整など、事前の準備が重要になる。
    9月 郵送準備
    関係省庁と調査の進め方を協議しつつ、郵送準備を行う。SRCのシステム関連部署の協力を得ながら、200万件にもなる車検データから50〜60万件の送付先を無作為で抽出し、名簿を作成。また、調査票の印刷、事務所で働いてくれるスタッフの研修会も同時進行で行う。
    10月〜11月 調査票の郵送
    およそ2ヶ月間かけて、依頼ハガキ・調査票等の郵送を行うとともに、電話応対を行う。
    11月〜 調査票の回収・矛盾チェック
    郵送後、1ヶ月程度で返送書類が事務局に届きはじめる。回収された調査票はナンバリング・開封・ファイリングを行い、回答内容に矛盾がないかチェックを行い、訂正を入れていく。事務局には最大200人のスタッフが作業を行なっている。
    12月〜1月 データ入力・クリーニング
    人手による矛盾チェックを終えたデータを、データクリーニングシステムやエラーチェックシステムに入力。さらに矛盾の洗い出しを行い、1月末にはすべての調査票の集計を完了する。
    2月〜3月 報告書作成
    調査データの最終チェック、指定された形式へのとりまとめなどを行い完納となる。

    「この調査はあくまで基礎調査ですので、データが政策などにどのように利用されているか実感しにくい部分はあります。ただ、私たちはこのプロジェクト以外の業務にも携わっていますので、道路の改修や再編の初期段階の検討資料を作るときに、道路交通センサスのデータが活用されているのを垣間見ることはあります。そういうときに、この仕事の意義だったり、やりがいを実感しますね」とUは話す。

  • 04.PROBLEM一筋縄ではいかない

    上記に大まかな流れを紹介したが、1年近くものロングスパンで、臨時事務局を立ち上げ、最大200名ものスタッフを管理するなど、調査としては大掛かりな部類に入るプロジェクトである。細かい実務は山のようにあり、問題は日々起こる。そのなかでも調査を円滑に進めるポイントとなるのは人材だ。
    「業務がもっとも忙しくなる時期は200人ものスタッフが臨時事務局で働くことになります。仕事は細分化されており、新しい人がどんどん加わってきますので、毎日のように研修を行い、業務が円滑に進むように管理するのは腕の見せ所(N)」。「一番求めているのは、プロジェクトの最初から最後まで毎日いてくれる人なのですが、そうそう都合よく集まるわけではありません。事務局を開設する場所を駅前にする、時給設定を調整するなど、人を集める努力が必要になります。また、矛盾チェック工程はITリテラシーが高い方がスムーズに進むことを経験的にわかっています。ただ、それも思うように集まらないので、適性のある人材を集めるのが苦労する点といえますね(U)」
    また、調査票の回収が思うように進まないという課題もつきまとう。
    「調査票を郵送していますので、疑り深い方からは国の調査だと信じてもらえないこともあります。一緒に印刷されている行政の電話番号をお知らせしたり、インターネットで確認してもらうなどの案内で真摯に対応させていただくしかないのですが、そこが郵送調査の難しさと感じることもありますね(U)」

  • 05.PROSPECT時代とともに変わる

    1928年から、おおよそ5年周期で行われてきた道路交通センサスだが、調査の手法は時代とともに変わってきている。2人が携わった平成27年度オーナーインタビューOD調査は、それまで実施されていた訪問調査が撤廃され、完全に郵送調査に切り替わったタイミングでもある。インターネットやテクノロジーの進歩によって調査手段も先進的なものになりつつある現在、こうした大掛かりなプロジェクトも、今後はさらに変わっていくことが予想される。
    「今は郵送調査と並行してインターネットを使った調査票の回収を行なっています。インターネットは、データがまとめやすく、クリーニングがしやすいという利点があるのですが、圧倒的に紙での回収率が高いのが現状です。ただし、訪問調査が郵送調査に完全に切り替わったように、いずれウェブでの調査が主流になるかもしれませんし、ビッグデータがあればそもそも道路交通センサスが必要なのかという意見がでてきても不思議ではありません。ですので次の年度でも対応できるように、先を見据えた手法を取り入れていくのはもちろんのこと、それをこちらから提案できるようになることも、目指しています。(U)」SRCのリサーチャーは、時代の変容に対応することを前提に業務を見据えており、どんな状況にも応えられる準備を欠かさない。

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