PROJECT STORYプロジェクトストーリー

SRCを紹介する上で外せないのが「自主調査」。特に近年多発する自然災害に対して、
独自の調査ノウハウを生かして収集したデータは各方面で高い評価を受けている。

PROFILE

専務取締役 世論・計画分野長
岩崎雅宏
平成元年、本社調査部(都市・交通分野)に入社。事務所勤務を通して、世論・計画分野、マーケティング・リサーチ分野に幅広く携わる。東北事務所企画課長、東北事務所長を経て、東日本大震災当時は、国立研究開発法人科学技術振興機構に約2年間出向し、東北大学災害科学国際研究所の研究員として勤務。帰任後は、復興・防災調査部長を経て現職。防災調査のエキスパートとしてSRCの自主調査の陣頭指揮をとる。
  • 01.BACKGROUNDなぜ自主調査を行うのか?

    SRCが行う自主調査のテーマの一つは「災害」についてだ。1995(平成7)年の阪神・淡路大震災における被災地での意識調査を機に、自然災害時の自主調査を継続的に行っている。防災に関する意識調査はインターネットでも散見されるが、SRCが重視しているのがフィールドリサーチだ。これまで防災の調査を行うにあたり、大学の研究室など、専門家と連携をとってノウハウを積み重ねてきたことから、SRCにしか収集できないデータとして、多方面から高い評価を受けている。
    「私たちができるのは、リサーチャーとして、対面でしか聞けない声を拾い上げること」と、プロジェクトリーダーである岩崎は言う。情報を取り扱う企業として、社会に還元できるものを考えたとき、自分たちの強みであるフィールドリサーチを役立ててもらうことが、SRCの”らしい”貢献と考えている。

  • 02.RESARCH STYLEできるだけ早く被災地へ

    「災害時の調査においては、被災地の方々に迷惑をかけないことを前提に、可能な限り迅速に現地に入ることが重要になってくる(岩崎)」。
    これには2つの理由があり、ひとつは被災者の意識や行動の記憶があいまいになる前に確かな情報を取得することが目的。もうひとつは、社会的な関心が高いうちに調査を行い、そこで得られたデータを広めることで、防災意識や減災行動の向上に結びつきやすくするためだ。被災直後はインターネットもつながらない状況だ。そこで、強みを発揮するのがSRCのフィールドリサーチ力。2016(平成28)年の熊本地震の際も、発災の翌週には学識者と被災状況の視察調査に臨み、災害対策本部の協力のもと避難所アンケートを実施。鮮度の高い有効なデータを取ることができた。

  • 03.RESARCH STYLE被災者の声を傾聴する

    2011(平成23)年に発生した東日本大震災では、仙台にある東北事務所が中心となり、SRCとしては初めての「避難所」での災害調査を実施。通常であれば、設計上に定めた手順で忠実な調査を行うが、このときは“傾聴面接法”という、独自の調査方法を行った。
    「過去の被災地調査で構造化された設問をもとに、忠実にアンケートのみを取ろうとする調査に違和感を感じた(岩崎)」という経験から、質問から答えが逸れたときでも親身になって話を聞き、記録に残すという方針を徹底。被災者の“被災経験を伝えたい”“聴いてほしい”という思いを汲み取ることで、定量的な調査手法では得られない内容の濃いエピソードを収集することができている。このデータは、災害を専門とする有識者からも高く評価された。

  • 04.RESARCH STYLE一歩先を見た調査を

    ここ数年で急激に増え続けている訪日外国人旅行者。彼らが日本にいるときに地震が起こった場合、どのように情報を得ようとしているのか。熊本地震の際には、現地の避難行動調査だけでなく、訪日外国人旅行者が「どのような避難行動をとったか」「避難時に困ったことは何か」などのアンケートを福岡空港で行った。
    これまでは日本人の避難行動にばかり目が行きがちで、訪日外国人旅行者に対してはどこまでケアがなされてきているのかが注目されておらず、そういった情報も皆無だったが、大阪府北部地震、北海道胆振東部地震が起こった際にも現地での調査を行い貴重なデータを収集。調査結果が注目され始め、行政だけでなく、観光、宿泊関連事業者や団体などでも活用されている。今後も多様化する調査テーマを見極めながら、有効なデータの収集を続ける予定だ。

  • 05.SRC FUTURESRCが考える自主調査のこれから

    SRCが自主調査で収集したデータは、プレスリリースという形で発信しており、報道を通して世の中の防災意識の向上に貢献してきた。また行政や研究者の方には、学会やセミナーでの報告や、より詳細なデータの提供などを通じて、調査結果は多角的に活用されている。一方で、「調査のデータを提供するだけでは、防災・減災へとつなげることは限界がある(岩崎)」ことも感じており、SRCではこうした自主調査のあり方をさらに進展させるために、産官学の連携強化に取り組んでいる。
    一例を挙げると、東北大学と石巻市役所とSRCが三位一体で行った共同調査だ。対象となった2016(平成28)年に起こった福島県沖地震の実際の避難行動では、車で逃げて渋滞が起こるなどの課題が発生。その理由にも迫る調査データが収集できた。「企業の自主研究の公表に留まらず、産官学が協働したことにより、市長ヒアリングでも報告され、車避難を前提とした道路計画や避難路確保の提言につながった(岩崎)」。
    こうしたSRCの自主調査には、それぞれの部署で専門領域を持つ社員が、自分の仕事を掛け持ちしながら主体的に参加している。ますます災害が増えることが予測される中で、報道、学会、行政の架け橋になるという意識を持ち、自分たちのやっていることに意義を感じながら今後も調査に取り組んでいく。

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